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八代の集合住宅

用途:共同住宅・事務所

規模:約1507㎡ 地上5階

構造:S造

所在地:熊本県八代市

​受賞:グッドデザイン賞2023

​掲載:テクチャーマガジン

​   建築技術2024年7月号

​撮影:小野寺宗貴

 コロナ禍を経てリモートワークが社会的に浸透し、職住の在り様が変化定着したことは既知の通りです。

 

 在宅時間の増加や、職住が一体となって営まれる暮らし、副業の普及等に対して、集合住宅の共用部と専用部の関係にいくつかの仕掛けを与え、多様化するアフターコロナの生活や人々の活動を受容し更には発展的後押しをする集住環境をつくり出すことを考えました。

 

 従来の中規模集合住宅は、通路としての共用廊下に住戸の玄関扉が並び、玄関扉を境に共用部と専用部が明確に区分される構成が一般的です。共用部と専用部が緩やかに切り替わる境界をデザインすることで、共用部に面する専用部が時にはセミパブリックな場所へと変容し、共用部と専用部が一体となって人々のパブリックな活動の場としても機能できる、住居が単にプライベートな場所であればよいわけではない現代において、専用部の一部に個人と社会が繋がる空間的拠点を内包しうる集合住宅を考えました。

 共用部と専用部が緩やかに切り替わる境界をデザインするための3つの仕掛けとして、

1)共用廊下に面する部屋の窓を掃き出し窓とし、共用廊下側に開く設えとしました。SOHO利用、趣味で古着販売、料理教室などの小商、住居の一部をパブリックな場所として活用可能とします。

2)共用廊下から直接アクセスできるバルコニー空間を設けました。共用廊下から直接アクセス可能なバルコニーは、土足のままプライベートゾーンへと来客を誘うことができます。広めのバルコニーでは、不用品のフリーマーケットを開催したり、自家菜園の野菜を販売したり、趣味のロードバイクいじりやDIYをしたり、様々に活用できます。

 

3)専用部の外周に共用廊下やバルコニーの外部空間を周回させ、周回する回廊に隔壁を一定間隔を開けて設置します。隔壁の内側と外側で少し異なる場所性を生み出し、プライベートからセミパブリック、パブリックのヒエラルキーのある外部空間をつくりだします。

​これら3つの仕掛けの結果として「居住」の幅を一回り超えた活動を受容する空間により、住うに留まらない様々な活動や交流を引き出します。

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